こんにちは、齊藤です。
前回の記事では「商品提供」の場面をテーマに取り上げました。
飲食業界で働くスタッフにとって、メニューの商品知識がとても重要であることの理由、
さらには商品知識の高め方や一歩踏みこんだ接客対応についても提案しました。
※前回の記事
【飲食店接客マニュアルの9ステップ】4「商品提供」でお客様の心をつかむ接客
※9ステップとは?
【飲食店の接客マニュアル】接客教育に効果的な「9ステップ」とは?
本日は9ステップの折り返し地点となる第5回目
「中間サービス」がテーマです。
「この店のスタッフは対応が素晴らしい!」
このようにお客様に感じていただけるためにはどうすれば良いか?
中間サービスの場面を想定し、詳細に解説していきます。
ステップ5「中間サービス」
お客様が大切な人たちと、美味しい料理や飲み物を楽しんでいるひと時です。
この場面では、あなたのサービスマンとしての力量が問われる場面です。
腕の見せ所と言っても良いでしょう。
なぜならばこの中間サービスの場面は、お客様の状況や特性によって
求められることが多岐に渡るからです。
画一的な対応は通用せず、刻一刻と変化する店内の状況、お客様の状況に応じて、
まさに「臨機応変」に対応することを求められます。
そのため、「新人スタッフ」と「ベテランスタッフ」で最も差が出るパートであると言えます。
さらに言えば、「あなたのお店」と「近隣のライバル店」の接客力の差が顕著に出る場面とも言えます。
難しそうに見える中間サービスの場面ですが、まず最初にゴールのイメージをスタッフ同士で
しっかり共有しておくことが重要です。
私が提案する中間サービス場面のゴールは次の通りです。
・お客様に「すみませ~ん!」とスタッフを呼ばせない接客をする。(先手のサービス)
大衆的な居酒屋業態やレストランの中で、「サービス料」をお客様から頂いているお店の数は
そう多くはありません。むしろほとんど無いのではと考えています。
しかしお客様がお店に支払われるお金は、メニューに記載されている料理やドリンクの
対価としての金額だけではないと私は考えています。
飲食店の「商品」とは?
お客様に提供するラグジュアリーでお洒落な内装の空間も、
お客様に非日常の時間を演出する上では立派な「商品」です。
そしてあなた自身の接客対応も、お店の魅力的な「商品」の1つです。
私が考える飲食店における「商品」とは
- 「商品」提供の価値
- 「空間」提供の価値
- 「接客」提供の価値
この3つです。
1つ例を挙げると、戦後の焼け野原で多くの人々が路頭に迷い、
飢えを凌いで生き抜くために、今日の食料さえ手に入らず困っている。
こうした状況における露店や屋台といった当時の飲食店は、
人々にとって切実に「食事を手に入れ、命をつなぐ役割」を求められていたはずです。
この状況では、当時の人々にとって「商品提供の価値」こそが
飲食店の存在価値だったと考えられます。
時代は移り変わり、今日の世の中には多彩な業種業態が生まれ、
一般消費者が飲食店に求めるものも時代と共に変わってきました。
美味しい料理や商品は、飲食店の生命線であることは間違いありません。
しかしお客様はお腹を満たすためだけに外食するのではなく、
「食事の時間そのものを楽しむ」ためにご来店されます。
そのためには先述した「商品」「空間」「接客」いずれにおいても
クオリティの高いものを提供することが求められる時代です。
今回のテーマである「中間サービス」は、あなたの接客がお客様に提供される「商品」という
考え方に基づき、美味しい料理と同じようにお客様を感動させ、また来ていただくための
具体的な対応を提案していきます。
それでは見ていきましょう!
お客様の卓上は清潔に
不要なゴミとなるものが発生してきます。
- 卓上にスペースを確保することで、次の商品提供をスムーズに行える。
- 卓上にスペースがあると「追加で注文しようかな」という心理状態になる。
この機会にぜひ知っていただき、スタッフの教育にも活かして下さいね。
メニューを大事に扱う
気づいた際にはメニュー立てに戻しましょう。
注文を終えると一旦メニューを回収するお店もありますね。
お席にメニューやメニュー立てが不要になるので、スペースが広くなります。
取り皿の交換
私が中間サービスの中でも特に意識しているのが、この「取り皿」への意識です。
日本の飲食業界の中でも居酒屋やレストランといった「大衆業態」の特徴として、
一人一品で完結するのではなく、いろいろ注文して皆でシェアすることが挙げられます。
ラーメン屋さんのような一部の業態を除いて、皆さんも何人かで外食に行く際は、
みんなでシェアしながら、いろいろなメニューを楽しみたいはずです。
実際、居酒屋メニューの大半は、お一人様用の少ないポーション(分量)の商品よりも
2~3人、または3~4人でシェアすることを前提としたポーションや価格設定を行っています。
2~3人で居酒屋に行った際に、サラダ3人前、唐揚げ3人前といった注文をする人はまずいません。
メニューカテゴリーの中から気になったメニューを1人前ずつ注文するでしょう。
このため、お客様のテーブル上には「酒肴」「サラダ」「刺身」「焼き物」「揚げ物」「〆飯」
最後にはデザートと、様々な料理が次々と提供されていきます。
私たちサービスマンに求められることは、一つ一つの商品を楽しむために必要なものを
過不足なく、そしてタイミングよく「お客様から頼まれる前に提供」することです。
サラダを取り分ける「トング」、汁物や召し物を取り分ける「レンゲ」などは大抵の場合、
一緒に提供されるので忘れることはほとんど無いはずです。
しかし「取り皿」への意識は、スタッフのサービスレベルで大きく異なります。
食事の前半で提供されるサラダにはドレッシングがかかっていることが大半です。
それを取り分けただけで、取り皿にはドレッシングが付着します。
ソースで仕上げるステーキやグリル系の料理も同様です。
1つの取り皿をずっと使い続けると、みるみるうちに皿が汚れてしまい、
お客様に味わっていただきたい本来の味が損なわれてしまいます。
私が中間サービスの際に必ず意識し、スタッフにも教育していることは
- 基本的に取り皿は1つの料理に対して、新しいものを1枚お持ちする。
- 使用中の取り皿以外に、お1人様につき最低1枚以上の予備の取り皿をテーブルに用意する。
この2点が基本スタンスとしておすすめです。
しかし実際には、お客様によって取り皿の使用頻度は大きく異なりますので、
- 料理と共に取り皿を持っていき、新しいものと交換する。
- 使っていない予備の取り皿が十分に残っていれば、邪魔になるので過剰に提供しない。
状況に合わせてこうした柔軟な対応をしましょう。
灰皿への気配り
店内が禁煙または分煙になった飲食店の数は多いです。
「灰皿」への細やかな気配りを行うことで、印象をより高めることができます。
「灰皿交換して下さい」とお客様に要求されてはいけませんよね。
- お客様の人数に対して「灰皿の数」は適切か。
- 食事の妨げになるような「灰皿の位置」になっていないか。
この2点についても確認するようにしましょう。
お客様の中で喫煙する方は何人で、どのような位置関係で座られているかが重要です。
4名テーブルで1人だけ喫煙するのと、全員が喫煙するのでは状況が異なります。
灰皿が1つだけであれば、あっという間に吸い殻が一杯になりますし、
灰皿をあちこち動かすたびに灰が飛散して、料理に入るリスクもありますね。
横並びのカウンター2名席でどちらも喫煙する場合も同様です。
料理はシェアしやすいように2人の真ん中にあるはず。
灰皿が1つしか無ければこれもまた料理の近くに灰皿がある状況になります。
飲食店のマニュアルでは、灰皿のセットは2名席で1つ、4名席で2つという感じで
席のキャパシティに応じてセット数を決めている場合が多いです。
しかし、それだけでは十分ではありません。
お客様をよく観察し、灰皿をテーブルやカウンターの両サイドにさりげなく追加するといった
細かい気配りが求められます。
こうしたちょっとしたアクションにこそ、サービスマンの技量が見てとれます。
細かい気配りの積み重ねが、あなたとお店への信頼関係を高めていきます。
おしぼりのチェック
居酒屋業態であれば、お客様をご案内してまず最初に「おしぼり」を提供するお店が多いです。
夏の暑い日には冷たいおしぼり、冬の寒い日には温かいおしぼりはカラダに嬉しいものですね。
中にはおしぼりに芳香剤や香料を使って爽やかに演出する心遣いのお店もあります。
おしぼり1つとっても、サービスの差別化をするヒントが詰まっているんです。
おしぼりは最初に1回提供して終わりではありません。
快適な食事のお手伝いをするためには、惜しみなく提供するのが私の考えです。
紙おしぼりでも布おしぼりでも、1本あたり数円のコストはかかりますが、
お客様の満足度を高めるためには投資すべき費用と考えています。
私がスタッフに教育している「おしぼりの交換タイミング」は次の通りです。
毎回提供する必要はありませんが、提供するとお客様に喜んでいただけるタイミングです。
- おしぼりに汚れが目立ってきた
- 手で掴んで召し上がる商品を提供した
- 卓上が汚れやすい鍋料理を提供した
- お手洗いからお席に戻ってきた
- 〆の料理やデザートを注文された
- 食事が一通り終わってお茶を提供した
いずれかのタイミングで1人のお客様につき1〜2回は交換が望ましいです。
最低でも1回は新しいおしぼりを交換するようにしましょう。
何度も同じテーブルに違うスタッフがお持ちすると煩わしいので、
お席の管理ボードにマグネットやマーカーで印を付けておくなど、
どのお席の交換が済んでいないかを可視化できる仕組みがあると便利です。
必ず1回は交換することを徹底するのであれば、おすすめは「食後」のタイミングです。
温かいお茶(またはお冷や)とセットでおしぼりを提供することをルール化すれば
分かりやすいです。
「食後のタイミングってどうやって判断するの?」
この疑問に対しての私の提案は
- 〆の料理やデザートを注文された。
- お腹一杯で追加の注文がされなくなった。
- テーブル上のお済みの器やグラスを全てお下げした。
- テーブルでお会計を頼まれた。
こうしたサインが食後であると考えて良いでしょう。
忘れずにお茶とおしぼりを提供し、お客様の満足度を高めましょう。
頼まれる前に先手を打って行うことが重要です。
料理の状態を確認
ここからは一歩踏みこんだ対応です。
中間サービスでは
「お客様が商品をしっかり召し上がってくださっているか」
にも目を向けます。
私のチェックポイントをご覧下さい。
- お刺身や生鮮食品が残っている場合は、早めに召し上がっていただけるように促す。
- 提供された料理が器に残っていて、卓上スペースを圧迫している場合は、一旦お下げして小さめの器に盛り付けて提供する。
- 鍋料理の場合、出汁が減っていたら適度に追い出汁を注ぎ足す。
- 料理に対しての調味料(醤油やソース)が足りない場合は追加でお持ちする。
- 熱々で提供された料理が完全に冷めて残っている場合、できる範囲で温め直す。
- テイクアウト可能であれば、食べきれず残ってしまった料理の持ち帰りを提案する。
商品を提供した後も、ホールをラウンドしながらお席ごとに食事の進行状況を常に把握し、
ここでも「頼まれる前の先手のサービス」で常に一歩先を見据えた提案をしましょう。
「言われたことをやるのは誰でもできる。それはサービスではなく作業である」
「お客様の立場になり、何を求めているかを考え、それをスピーディーに行うことがサービスである」
私は20代の頃からこの2つを常に意識して実践してきました。
「お客様に頼まれる前に気づいて行う」ことに価値を見出し続けて自分を磨いてきました。
今後もずっと大切にしていきたい私の信念です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ここで中間サービスのゴールを再確認しましょう。
・お客様に「すみませ~ん!」とスタッフを呼ばせない接客をする。(先手のサービス)
「お兄さん気が効くね!」
「よく見てるね!さすがだね!」
頼まれる前の完璧なタイミングで、求められるサービスをお客様に提供すると
こうしたお声を頂戴することがありますよね。
こうしたお声をたくさん集められるように自分はもちろん、スタッフも教育していくことで
「あのお店は感じが良い」
「スタッフがきちんと教育されている」
地域の中でこうした信頼を勝ち取り、お店のブランディングにもなっていきます。
接待などの会社利用が多いオフィスエリアや駅前であれば、幹事様のお店選びにおける
大きな判断材料に接客のクオリティが加わります。
インターネットの口コミやレビューのサイトを見ても、高評価のお店は
- 圧倒的なクオリティの商品力
- サービス力の高いスタッフが複数存在
これが共通しています。
必ずサービスの良し悪しが言及されています。
そしてそのサービスの印象を大きく左右するのが、今回の「中間サービス」場面です。
あなたのお店のサービス力がキラリと輝き、地域一番のサービス店舗に名乗りを上げれるように
心から応援しています。ぜひ本記事を活かして下さいね(^^)
次回の記事は9ステップの6番目となる「追加オーダー」がテーマです。
ステップ3で解説した「ファーストオーダー」とは少し異なる対応が求められます。
お客様のご要望を的確に理解し、的を得た提案ができるように解説しますのでお楽しみに!
最後までお読みいただきありがとうございます。
次回の記事でまたお会いしましょう!