齊藤です。
良質な人材確保は業種問わず重要なテーマです。
募集をかけて面接採用し、その後は研修を経て一人前のスタッフに育っていくのですが、
そこに至るまでは時間とコストがある程度かかります。
せっかく採用して育ててきたスタッフが思いがけずに退職したり、
採用後に短期間で辞めてしまうケースはないでしょうか?
「せっかく採用した人材が辞めないようにするためにどうしたら良いか?」
「高額な求人費をかけて採用しなければならない状況から抜け出すには?」
この2つの視点で私の実体験をもとにお話しさせていただきます。
新人スタッフの不安を取り除く
新人スタッフを迎えるにあたり、絶対に忘れてはならない優先順位があります。
それは「仕事を教える以前に、まずは新人スタッフの不安や孤独を取り除く」ことです。
この最初の壁をクリアしてから、具体的な仕事内容の落とし込みに入っていくべきです。
不安や孤独を心に抱えたままでは、仕事に対してのモチベーションが上がらず、
その後の成長が鈍化するばかりか、早期退職につながるリスクが大きくなります。
勤務初日までの準備
あなたの職場に明日から新しいスタッフが入店することをイメージして下さい。
勤務初日の研修内容に意識が向きがちですが、新人スタッフが高い意欲を持って
末長くあなたの職場で活躍してくれるかどうかは事前準備でも左右されます。
研修初日までに以下のチェックリストを確認してみて下さい。
- 研修マニュアル準備
- 制服一式・名札・ロッカーの用意
- タイムカード・勤怠データ・担当者番号などの作成
- 既存スタッフに新しい仲間を迎えると伝える
- 担当トレーナーに研修計画の共有
これらは最低限行っておきたい内容です。
新人スタッフがお店に来たものの、ロッカーや制服も準備されていなかったり、
先輩スタッフに挨拶したら「誰?」みたいな顔されれば不安でたまりません。
新人スタッフは期待よりも緊張が大きい心理状態でお店に来てくれるのです。
当たり前のことですが、上記のような最低限の準備を行っておくことで、
「ようこそいらっしゃい!」という歓迎の気持ちを、言葉だけではなく
事前準備という行動で示しましょう。
勤務初日までの緊張を和らげる手段としては
- 採用が決まった段階での店内ツアーや一部スタッフと顔合わせ
- 店舗のグループLINEに招待して歓迎のメッセージをみんなで送る
- お店に招待して実際に飲食を楽しんでもらう
- 勤務初日のロッカーにウェルカムメッセージを設置
こういったアクションも有効です。
実際にどんな人が働いているのかが分かる顔合わせは特に効果的です。
同じ学校や同級生、同郷といった共通項のある先輩スタッフがいると、
一気に距離感が縮まり精神的な不安はかなり軽減されます。
最初はそうした先輩スタッフとペアを組んで、研修を進めることもおすすめです。
勤務初日
初勤務日までにできる限りの受け入れ準備をした後は、いよいよ研修初日です。
飲食業においての営業店研修では、実際にお客様がいらっしゃる時間帯に、
先輩スタッフとマンツーマンで仕事を教わるOJT指導(On The Job Training)が主流ですが、
研修初日はあえてホールやキッチンに立たずに、会議室や事務所、バックヤードで
座学形式の研修からスタートさせる店舗もあります。
私の店舗でも研修初日はホールやキッチンに立たせず、途中休憩をとりながら
およそ5時間前後の座学研修を行うようにしています。
初日に座学研修を行うことのメリットとしては
- 営業に出ながらの研修と異なり、イレギュラーが発生せず集中できる環境がある。
- 店舗の就業ルールや店内レイアウト、商品知識などを最初に学んでおくことができる。
- お客様との対応の中で起こりがちな事例や注意点を最初に共有し、注意を促せる。
- 働く上で不安に感じていることや、質疑応答に十分な時間が取れる。
主にこうしたことが挙げられます。
あらかじめ身につけておくべき最低限の知識もないまま、いきなりホールに出してしまうと、
予期せぬ状況になってお客様に接客対応が求められてしまうケースになったりします。
自分で対処できなかったり、最悪なケースはお客様にお叱りを受けたりすると、
新人スタッフは精神的にダメージを受けてしまい、経験がないスタッフの場合は
そもそもお客様の前に出ること自体、怖くなってしまいます。
こうした状況に新人スタッフを陥らせないようにするためにも、初日の研修では
ぜひとも最低限の座学研修を済ませてからホールに立たせてあげてほしいと思います。
研修前~研修当日にかけては、こうした部分に配慮してあげることで、最初に抱いていた
緊張感や不安は少しずつ和らいでいきます。
具体的な作業手順や仕事のルーティンを落とし込む前に、研修トレーナーは新人スタッフの
こうしたメンタルブロックにケアしつつ、本人の表情や発言内容といった姿勢を観察し、
よき理解者であり頼もしい伴走者であってほしいです。
研修2日目以降
本格的な研修を進めていくにあたり、私が日頃から重視しているポイントもご紹介しましょう。
まず研修スケジュールに関しては、初日から7回目の勤務くらいまでの研修計画を立てておくことをおすすめします。
初日は先述した通り座学研修を行い、スムーズなOJT研修を行うための知識を学んでもらいます。
2日目の研修内容の例を挙げると、ベテランのフロントスタッフのサブに付いて
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
と笑顔で元気よくお客様にご挨拶する練習もありですね。
他の例としては、客席担当の先輩スタッフのサブに付いて実際の商品提供やお声がけといった
接客対応を間近で見学するといった内容になるでしょうか。
3日目は特定の限られたお客様のテーブルを担当し、先輩にサポートについてもらいながら
商品の提供をしたり、追加の単品オーダーだけテイクするといった実践的な研修になるでしょう。
ハンディターミナル等のレジPOSシステムを導入している店舗であれば、多少のタイミングの違いはあれど、
3日目~5日目のタイミングで操作方法を落とし込むことが多いと思います。
(いきなり研修初日からハンディの落とし込みは私はあまりおすすめしません。
これまで述べてきた通り、初日は不安や緊張を取り除くための座学研修に費やすべきです)
7日目くらいになるとある程度は仕事に慣れてきており、状況に応じて自分で考えて動けるケースが徐々に増えてきます。
こうなってくると、お客様のあまり多くない曜日や時間帯に独り立ちさせてポジションにつけてみるのもありです。
(とはいえまだまだ不安だと思いますので、先輩スタッフはすぐにサポートできる立ち位置にいてあげて下さい)
このように7日目くらいまでの研修計画を立てたら、その後にやるべきことは2つです。
- 研修計画をシフトレベルに落とし込み、日ごとの教育担当者まで決めておく。
- 新人スタッフには日ごとのテーマを最初に伝え、「今日のゴール」を理解させる。
なぜかというと、飲食業の営業中はイレギュラーの連続です。
お客様の数にしても、いつどれだけ来店されるかも読めませんよね。
ですので、研修の計画をシフトに細かく決めておいて、それを実行する行動力がないと研修がうまくいきません。
そして新人スタッフには漠然と研修させるのではなく、
「今日終わる頃には〇〇の提供方法と□□のセットを一人でできるようになりましょう」
といった具合に明確に着地点を示してあげることが重要です。
アルバイト未経験、飲食業未経験のスタッフこそ、最初の1か月は特に具体的でわかりやすく示してあげましょう。
そしてそれに応えてうまくできたら手放しで褒めてあげて下さい。
そうした日々の繰り返しこそが、自信とやりがいに繋がり、お店への愛着や自己成長に繋がります。
人材が辞めないメリット
良い人材を採用することは重要ですが、人が辞めず定着し、何年も活躍してくれる人材を増やすことは
多大なるメリットばかりです。
- 経験が長いスタッフの割合が増えることで、サービスレベルが引き上げられる。
- スタッフが辞めにくいので、高額な求人媒体を利用する機会が減る。
- 定着率の高い職場なので、既存スタッフが友人を紹介して採用に繋がりやすい。
- 現場を熟知したアルバイトスタッフが、正社員登用となるケースが増える。
私の過去の実体験でもこうしたことが挙げられます。
「お店の繁栄と共に、長きにわたってパートナーとして活躍してくれる大切な存在になってほしい」
あなたのそんな熱い想いに応えてくれる仲間を増やすために、
ぜひ勤務初日から新人スタッフを温かく迎えてあげて下さい。
最後までお読みいただきありがとうございます。